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工房おりがみコラム 更新
『そばにいてね。』

彼は、1ヶ月に1回実家に帰ります。
お母様や弟さんに会うためです。
もう3年目になります。
お母様は、苦しい病気をかかえておられます。
その様子を、彼に目の当たりにしてもらうこと
はつらいことだと思いましたが、立ち向かって
もらうことにしました。
母にとって、子供が元気でいてくれる、会える
ことが喜びと力になると思います。
11月も行きました。
その時に、「お正月、帰ってきてもいいですか
世話かけるけど、しんどくない、大丈夫?」
と話をしました。
お母様が、彼に
『そばにいてね。』と小さく、ささやくように
言われました。
私は、初めて、お母様の弱い気持ちを感じまし
た。


私の出来ることは、
彼を守ること。
それが、お母様との約束。
『そばにいてね。』
その深い言葉を受け止めます。

            管理者 山下 雅子




「はかれぬ心」   
      第三集「守り刀」より

ずっと、ずっと、
変わることのない想い。
「先におくってから。」
「また向うでも迷惑かけないように
      つれていかないとね。」

痛くて、痛くて、心を射る。
私は苦しくて、
1.2.3と小さく痛みを吐き出した。
お母さんに
「そうですね。」と
答えてもらえる言葉がみつからなかった。
たぶん心で言えても
声が前に出て行かなかった。
生やさしい言葉は
絶対出せなかった。

お母さんが、
ゆっくりほほえんで言われた。
「この子の妹がね。
   死ぬときくらい心配せんと
       ゆっくりしたら。」と。

私は、
ゴクンと音が聞き取れるくらいに
つらい固まりを飲み込んだ。

そして、
「そうですね。」と表情で答えて、
お母さんと二人して
同じ遠くをみた。